NHK放送文化研究所が、国際比較調査グループISSPが実施し
日本のデジタル化の“光”と“影”が同時に浮かび上がる興味深い結果が示されています。
1. インターネット利用、52%が「ほとんどいつも使う」
調査によると、インターネットを「ほとんどいつも利用している」と答えた人は全体の 52%。
一方で 15%は「全く利用しない」 と回答しており、一定数の非利用層が存在します。
特に注目すべきは、
70歳以上の 46% が“インターネットを全く利用していない” という事実です。
行政手続き、ショッピング、医療情報、交通、行政、家族との連絡など、多くの生活インフラがオンライン化する中で、利用しない人が半数近くを占めることは、日本社会における「デジタル断層(デジタルデバイド)」の深刻さを象徴しています。
2. AIの評価は「プラス」が多数派に
AIの利用に関する質問では、
56%が「プラスに働くことが多い」と回答 しており、
「マイナスが多い」の 16% を大きく上回りました。
AIへの理解や期待が、社会全体に広がっていることがうかがえます。
さらに詳細を見ると、
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男性は63%が「プラス」と回答(女性は51%)
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若年層ほどAI肯定率が高い
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高学歴ほど「AIはプラス」と答える傾向が強い
という“意識の分布”が明確に現れています。
これらは、テクノロジーとの接触度、日常生活での利便性、仕事での恩恵の実感などが影響していると考えられます。
若年層ほどAIを「身近なツール」として捉えている点も、昨今の生成AI普及を反映していると言えるでしょう。

3. 日本のデジタル社会は「二層化」している
今回の調査から浮かび上がるのは、
日本のデジタル社会は“二層化”しつつある
という現実です。
● インターネットを使いこなす層
若い世代を中心に、日常の多くがデジタル前提で行われている。
● デジタルから離れていく層
高齢層では、そもそもネットやAIに触れる機会が少ないまま取り残されつつある。
この“断層”は、今後ますます拡大する可能性があります。
特に70代以上で半数近くがネット未利用という状況は、行政・医療・地域コミュニティの在り方にも大きな影響を与えるでしょう。
4. これからの課題と可能性
日本が今後、デジタル社会をより良い方向へ進めるためには、以下のような視点が重要になっていきます。
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高齢者のデジタル参加をどう支援するか
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AIの正しい理解と活用を広げる教育・リテラシー向上
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世代間ギャップを埋めるコミュニティ形成や仕組みづくり
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誰ひとり取り残さないデジタル社会のデザイン
デジタル化は単にテクノロジーの問題ではなく、
社会の構造そのものを変えていく“文化の転換” でもあります。
5. おわりに
NHKの今回の調査は、数字以上の意味を私たちに問いかけています。
それは、“便利さの裏にある社会的な格差”への自覚と、
“テクノロジーをどう使い、どう生かすか”という未来への姿勢です。
デジタル社会の恩恵を、どれだけ多くの人と共有できるか。
そのために私たちは、これからどんな選択をしていくのか。
こうした問いが、これからの日本にとってますます重要になっていくでしょう。